男と女と涙と玉

「もっと優しくしてよ…」

「やだよ、つまんないじゃん」

「痛っ!ちょっと待って!」

「待たない。よし、次は後ろからだ」

「待ってってば!ちょっと!」

「だめ、待たない。」

「よーし、今だ!外野に回せ!」
「ってーな!顔面だろ!セーフだろ!」
「ローカルルールを押し付けんな!当たればアウト!シンプルかつ明解なルールだ!死ね!」
「おい避けろ!」
「待って待って!」
「待たない!死ね!」

頬を赤く腫らした女の子が泣いている。
「少しは手加減したらどうなの?顔面に思いっきり当てるってなに考えてるの?」

僕らは良い歳こいてドッジボールをしていた。

「手加減してるじゃねぇか。男は一回でアウト、女は三回。充分だろ。」
「ボールだってそんなに早く投げたら痛いでしょ?」
「お前、オレが小学生のときはバスケットボールでやってたんだぞ。こんなポヨポヨのゴムボールで痛かねぇよ」

女どもはいつもそうだ。
女は強い。男は弱い。出産の痛みはどーのこーの。生理の痛みはどーのこーの言うくせにちょっとボールがかすっただけで大騒ぎしやがる。

「だいたいよ、勝負事で手加減なんてご法度だろ。面白くねぇ。」
「男女じゃ体力の差だってあるんだからね。」
「テメーらが運動不足のおっさん予備軍なんかに負けないって言ったんだろうがよ」

男を小バカにしてる女どもはドッジボールで、男に挑んできた。
しかしだいたい、よく考えて女がドッジボールで男に勝てるわけがない。ということでハンデとして好きな男を二人仲間に出来ることを条件にした。

選ばれた男は選ばれたことに喜び張り切っている。
しかし、僕を始め選ばれなかった男たちは完全に「全員泣かせてやるよ腐れ○○○ども」状態なのだ。

しかし、クソアマども。
勝利が遠いと気づくとさらにご託を並べハンデを求めてくる。

「ズルいよ!」
「何がズルいんだよ」
「パスしてばっかりで全然とれないじゃん!
「そういう遊びだろ。」
「じゃあハンデとして三回当たってアウトにしてよ!」
「なんだよそれ!おい、どうするジュン?」

「三回で良いよ」

「なんだ、話分かるじゃん。」
「三回もブチ当てられるんだろ。痛がる顔を見せてもらおうか、なぁ」

その結果、冒頭に戻る。

相手に挑発され、勝負を挑まれハンデも充分与え、ルールに基づいて競技し当てたら責められる。

この試合、男にまるでメリットが無いように思えてきた。

「止めよう。もうこんなこと。」

「なんでよ!逃げるの?!」
「逃げるもなにもオレらの圧勝じゃん。メリットが感じられない。」
「分かった!もし負けたら罰でもなんでも受けるから!」
「いや、もういいよ。」
「負けっぱなしでムカつくの!やろうよ!」
「しかたねぇな…負けたら罰受けるんだな」
「負けないけどね!やるんだね!」
「よし、やってやるよ。」

「よーし、お前ら負けたら全員ここでおっぱい見せろ。」

言葉を失う女ども。

「無理!なに考えてるの!」
「負けないんだろ?」
「そうだけど…」
「じゃあお前ら女は5回でアウトにしてやるよ。あとオレたちは外野なし。あとはそうだな、男を三人貸してやるよ。」
「そんなに…?」
「はっ、楽勝だな。もしオレらが負けたら高級レストランでもなんでも今日1日ぜーんぶ払ってやるよ」
「おおー、勝てそうかも!頑張ろっ!」

そして、試合は再開された。

「三人、味方に貰って良いんだよね?」
「ああ、好きなやつ選べよ。」
「えっと、じゃあ…」

選ばれた三人を相手に差し出すときに小声で

「おい」
「もちろん」

こんなやり取りが行われていたことは女どもは知らない。

終わり

Rocker and Locker

駅前などによく置かれているコインロッカー。
数百円入れれば荷物を預けることができる便利なものです。

コンサートやライブに行くのが趣味の人もいると思います。僕もそうです。
こういったコンサート会場やライブハウスには必ずと言っていいほどこのコインロッカーが設置されています。

これは、ギュウギュウ詰めになることも多いですから大きなカバンなどを持っていられると邪魔になるし、
また貴重品や財布など、落としてしまうと回収するのはほぼ不可能です。スリなどの犯罪も考えられます。

こういったわけでコインロッカーを利用する人も多いのですが、ある日僕も例によってそのコインロッカーを使ったんです。

あのコインロッカーって最近では鍵の代わりにSuicaなどを使うところも増えていますけどだいたいが普通の鍵で施錠するんですね。
そんでもって、使える場所、つまりは空いているロッカーには鍵が付いたままになっているというわけ。

もちろん、その日僕は鍵のついている空いているロッカーを使おうと開けたんです。
ライブハウスのコインロッカーってどうしても利用者が多いことや数が少ないこともあってなかなか空いているところがなかったりするんです。
その日もほぼ全部使われている状態でした。しかし、一つだけまだ鍵のついたままのロッカーがあり、僕は「ラッキー!」とそのロッカーの扉を開けました。

するとどうでしょう。
なんと中には荷物が入っているじゃないですか。

大量の大人のおもちゃが。

ドピンクのウィンウィン動くアレからホットな下着。医療器具じゃないの?って感じの金属の謎の器具が出てきました。

加えて意味が分からないのが、全部袋などに入っていなくゴロンとロッカーの中に無造作に置かれているわけです。
それに100歩譲ってカバンが一緒に入っているなら、ライブの後にどっかで使うのかなどとも考えられますが、そういうわけでもないので本当に意味が分からない。
そして、なぜ鍵をかけていないのか。

いや、鍵をかけていないことは割とよくあることでして、単純にかけ忘れてしまっただけかもしれないですが、
それにしても中身が中身なだけとことん気になります。

もうどうしたらいいのよと頭を抱えていましたが、そろそろライブも始まってしまうし困ってしまったので、
とりあえずそのバイブだらけのロッカーに自分の荷物を入れ、鍵を閉めました。

そして、ライブが始まり終わってしばらくした後にロッカーに自分の荷物を取りに行くと
コインロッカーのあたりでごそごそしてる人がいたんですよね。

まあ、ライブの後だし鍵でもなくしたら帰る身支度でもしてるのかと思って特に気にしなかったんですけど
僕が鍵をだしロッカーを開けると「あっ。」と後ろから声がしたんですよ。

この日僕が行ったライブってのは海外のロックバンドのライブで、客層は16~25歳くらいの人が多かったんです。
また、僕が好きなジャンルの一つのデスメタルやブラックメタルでは、1人や2人殺してるんじゃないの?っていうお兄ちゃんや妙に露出の激しいババア。あと左手首を隠すように(ご察し)リストバンドをしている少女が客として多いイメージですが、
今回のは割のスタンダードな感じでして、またシックなバラードも多いものですから割りとふつうな感じの人が客として来ていたんです。

ちょっと想像してみてください。
とあるファミレスでアルバイトをしているフリーターがいます。
何の目的も夢もなくただバイトして暇をつぶしている状態。
しかし、ある日新しく入ったバイトの子を見て人生が変わります。

新しく来たその子は女子大生。茨城から東京の大学に来て生活費や学費などを稼ぐためにこのファミレスにバイトしに来ました。
そのバイト先でもその可愛らしさあってかとても人気です。同性からも異性からも好かれるようなそんな彼女。
みんな、彼女の事が大好きでした。

フリーターの彼も例外ではありません。それも「異性として」彼女のことが好きになりました。

ある日、彼は決心します。
食事に誘おうと。

仕事が終わり控室で待っていた彼。彼女ももう少しで仕事をあがりここに来るはずです。

「お疲れ様ですー。」

来た。
彼は勇気を出して声をかけます。

「お、お疲れ様・・・。」

そういうと黙ってしまいました。

彼女は椅子に座り、紅茶を飲んでいます。
続く沈黙。

チクショウ。なぜ俺は声をかけられないんだ。
彼は自分自身にいらだちます。

ダメだ。こんな情けない俺に彼女が振り向くはずもない。
帰ろう。俺には一人がお似合いさ。しがないフリーターだ。

そう思って荷物を手に取ると

「あ、あの・・・!」

彼は驚き振り向きます。

「あの・・次のお休み、暇ですか・・・?」
彼女がそういったのだ。
パニックになる彼。どういうことだ。
彼女が俺を誘う・・・?

「ももももももちろん!」
慌てながらそういうと、彼女は

「前に・・○○ってバンド好きって言ってましたよね・・?チケットがあるんですけど友達がいけなくなっちゃって・・。よければ一緒に行きませんか・・・?」

「え?いいの?」
「あの!迷惑じゃなければで良いんですけど・・・!」
「い、いきたいです!」
「ホントですか!ありがとうございます!」

彼女は顔を赤らめてこっちをじっと見ていた。

こんな感じの女の子が、僕の方をみてたんです。

そこで僕はふと思い出しました。
僕は鍵のついたままのロッカーを使っていた事。
そのロッカーの中には荷物が入ったままだったこと。
その荷物は大量のアダルトグッズだったこと。

まさか、この子の荷物だったのか。

あんなにエグイのがこの可愛らしい子に出たり入ったりすんのかよ。と僕は世の中の不条理を嘆いたものです。

「あ、あの鍵かけ忘れてしまって・・・。そこだと思うんですけど・・・・。」
彼女は顔を赤らめてこっちをじっと見ていた。

「こんなものより、もっと良いもの使ってみない・・?」
そうやって脅して喰っちまおうかとかも考えましたが、さすがにそれは人間としてどうかとおもうので、
にやにやしても突っ込んでも気持ちが悪いし、ここはさわやかに振る舞おう。
僕がそう思い、

「鍵が開いてたから使っちゃった!」
と、それだけ言い彼女に鍵をポイっと投げて渡し、去って言ったんです。

「キャー!」
例の彼女でした。
その叫びを訊いたスタッフがすっ飛んできて僕に
「荷物!忘れてますよ!!」
と叫んだ。

彼女は顔を抑え、僕を指さしてます。
それは恥ずかしさでもなく照れでもなく、「嫌悪」の顔でした。

どうやら、彼女のロッカーが僕の一つ左だったようです。鍵をかけ忘れていたそのロッカーはスタッフが中身を回収して保管してあって、その後に違う人が使っていたようです。

「違う。オレのじゃない。」
僕は一生懸命スタッフに説明しました。
鍵のついてるロッカーを使おうとしたら中に入っていた事。
時間がなかったのでそのままそこを利用したこと。
彼女が鍵かけ忘れていたと言っていたこと。
彼女は私の荷物はそこだと僕のロッカーを指した事。

色々説明しました。その結果、スタッフの彼女も納得してくれました。
後から店長から聞いた話では、前日にここでライブした「アナルブレイカーズ」というバンドの忘れものではないかということでした。

迷惑をかけたということで店長が僕と彼女にライブハウス内にあるバーで一杯奢ってくれるという事になりまして、
お互いに「勘弁してよ、もう」状態でした。

同じライブを見に来た手前、趣味も合うし店長の饒舌さもあってちょっと仲良くなって来ました。
彼女が「アレ、どうやって使うんですか?」というと、店長は
「そんなもん突っ込んで入れたり出したりするんだよ。」
「違いますよ!ライブでの話ですよ!」
「がっはっは!」

そんな感じですっかり閉店までいてしまい、店長も「もう終わりだからねー」と言いだしましたのでライブハウスを出ました。

ライブハウスを出ると彼女は「あっ」と小さくつぶやきます。
「どうしたの?」と僕が聞くと

「終電・・無くなっちゃった・・・。」

こんなことなら1,2本持ってくればよかった。
僕はアナルブレイカーズに感謝しつつライブハウスを後にしました。

美しい人生を

女をめぐる男の争い程、不毛なものはないのである。

それはそれは遠い昔、たしかまだプテラノドンとかいるくらいの時代ですかね。
僕は男3女5で小旅行という聞いてるだけでウキウキしてくるようなイベントがありまして。

でも、僕があまり乗り気でない理由は
その女どもがブサイクブサイクブサイクブサイク、アンドブサイクというもしポーカーだったら物理的にもあり得ないほどの強カードが集まってしまっているからです。

しかし相手がそんなロイヤルストレートブサイクにも関わらず、まあその頃は20歳そこそこくらいという暇があったら一発ヤリたいくらいの年齢ですから。
男どもは張り切ってたんですよ。
僕は世の中からブスと戦争をなくそうといつも声高々に叫んでいる活動家ですからね。なんか車で行くらしいし、ちゃっかり乗り込んで目的地でマシなのでもひっかけようと思ってたんです。

でもまあ、それにしても男ども、といっても僕を除く2人ですけど妙に盛り上がっていて
やれ、俺はあいつをねらうとか、やれ俺はあいつをねらうとか言ってましてね。よくもまああのブサイクでこれだけ盛り上がれるもんだねと感心したものです。

さらに無性に腹が立つのは「○○ちゃんには手だせないからね!私が守るんだからね!」とか地蔵みたいなブサイクを抱きかかえながら地蔵を前世で蹴っぱぐった祟りじゃないかと思わせるほどのブサイクが言ってますからね。

そんな呪われしブサイク達相手に男二人は旅行プランを組み立ててまして、やれどこに行こうだのここに泊まろうなど大盛り上がり。

「ホテルの部屋割りどうする?」
男がそう言います。
「えー、なにー私と同じ部屋が良いのー??」
女が言います。
「なになに、そうがいいんだろ」
男が言います。
「どうせみんな同じ部屋に集まりそー」
女が言います。
「盛岡か、ちょっと足を伸ばして仙台でも有りだな。」
僕が言います。
「何かいいとこでもあるの?連れてってよ!」
女が言います。
「こいつ早く死なねぇかな。」
僕は思います。

女性を口説くとき。
それはたまに狩りに例えられることがある。
「ガールズハンティング」そう呼ばれることもあるほどだ。
男は狙いを定め、女を撃ち落とす。
狩猟のそれと似通った部分があるのだろう。

旅行の前夜ですね。
男の方から「狩りの前夜祭だ。」ということで誘いが有りまして。
僕が「発砲許可がでたのか!」と大喜びで行ったんですけどどうやら違うようで。

結局、男3人で一部屋。女5人で二部屋取ったらしいんだけどどうやら二人の話題は

「一番かわいい子の部屋には誰が行くか。」

というものでした。

僕の頭のなかでは5つの男爵いもが並んでおり、その「一番かわいい子」はどのイモか悩んだものです。あんなに悩んだのは高校受験の世界史以来だと思います。

「ジュンはどうするんだ。」
そう聞かれ僕は
「オレはメークイン派だからお前らに譲る」と答えると、
「意味は分からないが、お前いい奴だな。イケメンの余裕だな。」と絶賛の嵐でした。オスカーでも貰えそうなくらい。

そうとなると男二人は議論を白熱させてました。
譲ってくれるなら他のヤツは譲ってやるとか、この際二人で行く?とか、お前の後はなんか嫌だとかそれはそれは自分勝手な議論でした。

そんな話の中「そしたらジュンは4対1じゃん!すげーな出来んの?」と言い出しやがりまして
「ああん?」と思わず本気の苛立ちが出てしまい「あ、ごめん。そういうのじゃないよな。」と何故かマジで謝られたりもしましたが、
結局「自分自身の力で勝ち取った方が勝ち。」という結果に至りました。

そして結局朝まで飲み明かすことにしたわけですが、運転手の予定である僕ともう一人の男はそこそこにして
残りの一人は完全に酔いつぶれていました。

眠っている男の傍らでもう一人の男が

「馬鹿め、敵を前にして油断しやがって。」

とくっくっくと笑っています。

何の話だろう。

僕がそう問いかける暇さえ無く男は風呂場へ行き

「つるつるにしてやるぜ。」

とカミソリとシェービングジェルを持ってきました。

彼が言うには”シモの毛”をつるつるにしてやれば脱ぐことはできない。
この戦いは俺の勝ちだ。

ということだ。

なんだか面白そうなことになってきたので、僕は全面的に彼に協力することにして
事の結末を見届けることに決めました。

すっかり寝ている彼。随分さっぱりした彼のムスコ。僕たちは声を押し殺して腹を抱えて笑ったものです。

なんか深夜の妙なテンションもあり、ついでに彼の足、腕、脇、眉毛とあらゆるところを剃毛してあげたところで僕らは大満足で少し眠ることにしました。髪の毛は残してあげる私達の優しさ。

旅行の当日。
笑い声に包まれる車内。

ウケたのが嬉しかったのかツルツルの彼も予想外に上機嫌でした。

「こいつら、マジで全身やりやがったからなー。」

「マジウケるー!!」

大盛り上がりです。

「マジで酷いよね!下のアレもやられたんだぜ・・。」
「マジでー!」
「まったくどうしてくれるんだってのなー!」

なんだか妙に盛り上がってる車内。
一人の女がそのツルツルの彼に

「・・・私もだよ。」

と耳打ちしているのを聞いてしまった僕は車酔いもしていないのにムカつきを覚えました。

それを聞いた男が「ええー!」と大声をあげそわそわしています。
なになにーと盛り上がるその他大勢。ネコの轢死体でも見たような僕。

さっさと目的地につくことを願って僕はイライラ待っていたのでした。

その夜。
こんな男たちの不毛な争いの結果を待たずして、僕は盛岡の街に一人消えていったのでした。