119 火事と警官と僕

つい昨日、生まれて初めて119番通報した。 

昨日ですね、夜勤明けの僕はお昼過ぎ14時くらいに起きましてね。なけなしの給料をおろしに行ったのですよ。

銀行まで歩くと20分くらいかかるんですけど、歳なのか少し太りましたしね。僕結構歩きながらiPod聴きながら歩くの好きなんです。

日を重ねるとごとに減っていく残高、そして増えていく貯金用の残高に一喜一憂しながら帰ってたんです。

音楽聞く人なら分かると思うんですけど、iPodなどで聞きながら歩いて帰ったりしてる時、アルバムが中途半端だからちょっと遠回りして帰ったりすることってあるじゃないですか。どうせなら全部聞きたいって思って。

その日僕もまさにそうだったのですが、ちょっと遠回りして歩いていると、煙が上がってたんです。

僕が住んでるのってちょっと奥行けばジジイババアの田舎ですから。庭で焚き火してたりする事も多いので煙なんざしょっちゅう見かけるんですね。

だから気にせず歩いてました。

家、燃えてた。

2階建てのアパートですね。めっちゃ燃えてました。
窓や入り口のドアからは5~60センチほど火が上がっていて何人か近隣の住民でしょうか。少し離れたところで見ていました。

いや、これが本気でびっくりしました。人間マジで驚くとホントに動けなくなるんですね。

「これ、通報したの!?」
僕が叫ぶと見ていたギャラリー共、シカト。
一人のおじいさんが「してないかも。私電話持ってないからお兄さん電話してくれるかい!?」だって。お前ら今まで見てただけかよ。

僕は119番し、
「○○中学校の前、住所は○○(電柱見た)の近くで火事です」と電話した。

よし、これでとりあえず…と思ってたら中から住民の人らしいジ…年配の方が出てきた。

マジで?今まで中に居たの?

僕も怖いですからね、少し離れたところから
「こっち来て!危ないから!消防車よんだから!」と叫びました。

でも足がすくんでうまく歩けないご様子。
するとそこで住民の人が
「火事です!」と叫んだ。
いや、知ってるよ。

そんなことやっている内に二階からまた違うご年配の方が出てきた。
マジで?今まで中に居たの?

僕はその人にも
「早く離れて!消防車よんだから!早く!」

僕がじいさん二人を少し離れた場所にヨタヨタ引っ張ってくと、近くの中学校から
「通報したからね!今来るから!」
と消火器持った先生が出てきました。

それと同時くらいに作業着着たお兄ちゃんも消火器抱えて走ってきて「通報したからな!早く避難しろ!」と叫びました。日本は死んでなかった。

しかしまぁ火の勢いは素人が見ても「消火器でどうこうできるレベルじゃない」事はわかりましたね。

僕はヨタヨタ歩く住民二人を引っ張ってたのですが、例の先生が

「後ろ!早く離れて!」と叫びました。

えっ。っと後ろを見るとプロパンガスのボンベ。そして燃え盛る炎。炎に包まれてるボンベ。

マジで勘弁してくれよって呟きました。

うへーとじいさん二人とヨタヨタしてるうちに地元消防団員到着。じいさん二人を保護。そしてすぐに消防車到着。

それからは早かったですよ。一分も立たないうちに道路封鎖、救急車到着。それに放水開始であっという間に火は消えました。日本の消防はすげぇよ。感動したよ。彼らのために使われるなら税金も文句言わない。

通報から鎮火までおよそ10分程度。
その後警察やガスや電気の会社の人。アパートの管理会社の人がわらわらきました。
僕は通報者として話を聞きたいとのことでちょっと待たされることに。

火元の部屋の住民は救急車で病院へ。上の階の人と僕は事情聴取することになりました。

ここからが大変でした。

まず、消防士の方から。

「お怪我はありませんか?通報者としてお話をお聞かせください。」
と、ドカジャンのような上着を貸してくれました。そして一応救急隊の人に体の調子のことを聞かれましたが怪我一つないので大丈夫と答えました。

「まず、大怪我や死傷者もありません。延焼も防ぐことができました。迅速な通報のお陰です。ありがとうございました。」

なんて嬉しい言葉でしょう。光栄であります。

その後、どのあたりから煙を見かけたか。何時に通報したか、火の高さや火の出ていた場所。住民の様子などを聞かれました。
僕も出来るだけ思い出し、細かく説明しました。

最後に
「何かあったら連絡したいのですが、良ければ連絡先を教えてもらえますか?」
と言われたので名刺を渡して終わりです。

終わったくらいに今度は警察官が来ましてね。

「通報者の人?話いい?」

ですって。良いですけどね。

まず、名前から。
名前を言うと漢字がわからなかったのか何度か紙に書いたあとに少し考え
「免許証ある?」

バカか。

そして帰る途中で煙を見かけて近くに行ったら火事だったと説明すると

「ってことは第一発見者ってこと?」
いや、オレが来る前にはもう誰か居た。というと

「通報したのはあなたですよね?」
いや、そうだけど見てた連中は通報しないで見てただけだったんじゃないの?

「あっ、そう。」

お前が聞いたんだろ。

そして、中から人が出てきてあっちの方に連れてったと説明すると

「その人はカジン?」

はぁ?カジン?
僕が言うと近くにいた消防士の人が「住民の人のことね」と教えてくれました。へー!知らなかった!勉強になったよ!

挙句の果てに
「仕事は?」
会社員です。
「えっ?平日休みなの?」
夜勤明けです。
「どこいってたの?」
買い物です。
「何も持ってないじゃん」
銀行です。買い物じゃなかったね、ごめんね。
「家、こっちじゃないじゃん。遠回りじゃん」
別にいいじゃん。散歩がてらだよ。アルバム聞きたかったんだよ。プログレは一曲が長いんだよ。

なにこれ、オレ容疑者なの?

後で違うおまわりさんに聞きましたが、警察が故の癖なんだそうです。なるほどねー!

なんか疲れちゃったので「まだ帰れないの?」と聞くと

「刑事になるからわかんない」

刑事ですか。右京さんでも来るんですかね。僕大ファンなんですよ。

その後待ってるとなんか写真撮ったりするんですかね。また違う人が来て同じ話をさせられました。

何度も何度も同じ話をさせられ、また最初の警察官に

「なんか爆発音みたいなのした?」
と聞かれ、ボンと何回か鳴ってたねと言うと
「分かんねぇなー、他の人は爆発はしてないって言うし爆発するようなものも見当たらないんだよねー。」

知 る か ボ ケ ナ ス 

そりゃあね、他の人は遠くで見てただけだからね!近くまで寄ったのオレだけだしね!
爆発はしてないよ!破裂音かな!空気の入った紙袋を叩いたような音だったよ!言い方が悪かったね!ごめんね!

その後も
「そのカジンに怪我は?」
顔に少しすすがついてた
「服は?」
少し燃えてた
「色は?」
覚えてない
「どんな服だった」
救急車に乗ってるから見てこいよ

など。
さすがにイライラしてキレたのですが、
「警察の仕事だからゴメンね」
と若い警察官になだめられました。お茶、ごちそうさまでした。選ばれたのは綾鷹でした。

そんな調子で二時間ほど。あたりはすっかり暗くなってもいつ帰れるのか分からずボケっと見てるとなんか「邪魔だな」みたいな顔で見られるし早く帰りたかった。

やっと帰れたのも消防隊の人が「帰れないの?」って声かけてくれて
さぁ。帰りたいけど。
と言ったら警察官に聞いてきてくれて帰っていいよの事。

帰り際も頭を下げお礼を言ったのは消防隊の人たちだけ。

はっきり思ったね。

通報しなきゃ良かった。

みんなは笑ってお疲れ様って言ったけど、通報しなきゃ良かったって思わせたらダメじゃない?

もし、僕がまた火事などを見つけたら通報するか。
おそらくするんだろうけどできればしたくない。そこにすでに人がいたなら「もう通報しただろう」と勝手に思いしないかもしれない。できれば関わりたくないから。それでもし誰も通報していなかったらどうなることか。

別にありがとうと言われたいわけではないしそれはいいんだけど

なぜ同じ話を何回も何回もしなくてはいけない
なぜ少し遠回りした事を疑われなければいけない
なぜちょっとした言い違いを責められなければいけない
なぜもう、終わったから帰っていいよと声をかけてくれない

いや、僕だってわかるよ。警察は僕を疑ってるわけではないって。しかしね、オレだってパニックだったし今迄にこんな経験ないもん。「えっ、なんか疑われてるの?」って思うよ。

僕は防犯カメラじゃない、人間だ。

途中で思い出す事だってあるし記憶違いだってある。見てないところだってあるしパニックだって起こす。

大袈裟でおこがましいが、何故人の命を助けて嫌な思いをしなきゃならんのだ。

なにより、その警察官の罪は僕に
「通報しなきゃ良かった」
と、思わせたこと。

そうそう火事なんかないけど、例えば
家の前で財布を拾った
知ってる人かもしれないので中を見て免許を見た
知らない人だったので交番に届けた
後日、持ち主が交番に行く
金を抜かれてる!
拾ったのはお前だし、お前だろ!

と、言われるようなものである。ありそうで怖い。

だからこそ財布を拾ったまたは見つけたとしても見てみぬ振りをするようになってしまうのではないだろうか。

所詮人間一番可愛いのは自分。
人の財産が焼かれようが命を落とそうが知らん。
万が一にも疑われ容疑者にでもなったら困る。オレだってオレの人生があるし家族だっている。
だから火事があっても無視する。人の命が危うくても無視する。知らん。

って言うふうにいずれなっちゃうと思う。
僕も当日は一瞬そう思ったのが事実。

まぁね、警察官もそういう仕事だから仕方がないんだけどね。
でも最後に一言言わせてもらうと

口の聞き方考えろ。

僕ら一般人は警察の強めの口調や疑いの口調ってメチャ怖いんだ。バカヤロー。

そういや、新聞で読んだけど住民の人は軽症ですんだみたい。良かったね。

警察にはなんかいい思い出がない僕なのでした。
ちなみに右京さんは来ませんでした。会いたいなぁー。

浮気調査と拡張子

どうして浮気するんでしょうか。

僕が独自に調査したアンケート「20代の会社員の男性1人に聞いた、今まで浮気したことありますか?」というアンケートによると、100%がYESと答えました。

ある日、20代の会社員の男性の元にメールが届きます。
「夫が浮気してるっぽい。調査してくれないか?」

その相談者の奥さんは僕の同級生なんですけど、突然そんなメールを送ってきました。
まず、なぜオレがそんなことやらなくちゃならないんだと思いましたが、メールをやり取りしているうちにどうやら昔飲み会かなんかで「オレ探偵だから困ったときは相談して。」と言ったらしいです。覚えてない。

それを覚えてた奥さんは、夫が浮気してるっぽい。そうだジュンさんに相談しよう。と今に至るってわけだ。

なんだかとってもめんどくさいことに巻き込まれそうになってるわけですが、なんだかとっても面白そうなので引き受けることにしました。

依頼者は同級生なのでサクっと会い、事情を聴いてみたところ

夫は同じく20代の会社員の男性。
なんだか最近コソコソと出かけるということ。
そして、自宅に夫の仕事関係の急ぎの電話が来て、ちょうど残業だといわれていたので会社にかけてもらったところ
会社には居らず、その仕事関係の人から折り返し自宅に電話がかかってきたらしい。

怪しいと思っていたら極め付けにカメラから大量の写真がでてきたという。
ちょっと見せてというと、私はもう見たくない。見つけた時もショックで最後まで見れていないので家で見て確認くれと言われました。そんなになのか。
僕は持っていたUSBメモリーにカメラのSDからすべてコピーして持って帰りました。

家帰って見てみるとでるわでるわ大量の写真。
普通のデートらしき写真から旅行、ましてや思いっきりInsertしてる写真まで。
こりゃ嫁さんも固まるわと見てたら、最近のほうに嫁さんとの写真もありました。興奮した。

しかし、まあ普通不倫相手と嫁さんを同じカメラでハメ撮るかね。

そしてまた後日。
奥さんから夫が残業で遅くなる、と連絡があった日に夫の職場前で待ち伏せし、後をつけることにしました。
僕は夫のチンコはみましたけど、写真に写ってたとはいえ、実際には顔は知らないのでどの人か教えてもらい、
その後奥さんとは離れ、僕単独で尾行します。

夫の後をつけてみると、仕事は定時に終え、一人居酒屋に入り、30分ちょっとほどで居酒屋をでて、普通にヘルスに入っていきました。

うーん。浮気ではない・・のか?

まあ、どっかの素人ではなかったので良かったのかどうなのか分かりませんでしたが、お店を見て悩んでると中から怖いオッチャンが出てきて、空いてるよー60分15000円だよーって言われました。

悩みましたが、60分堪能してたら夫は先に出てきてしまうのであきらめました。名刺だけもらっておきました。

それから待てど待てど夫は出てきません。
暇つぶしにさっきのオッチャンにどんなコースあるの?とか聞いていたら衝撃の事実。
240分コースがある、と。

4時間っすよ。4時間。
まさか、オレはここで4時間もおっさんが抜き終わるのを待たなきゃならないのかと絶望に打ちひしがれました。
でもしかしね、60分とかそこらのコースもありますので夫がそっちを選んでいる事を祈って待ちました。

そして4時間がたちました。

呼び込みのオッチャンすらシフトチェンジでしょうか、違うオッチャンに変わってます。こんなことなら60分で入っとけばよかった。
すっかりゲンナリな僕ですが、そうこうしてるうちに夫は出てきました。なんだよその優しい顔は腹立つわ。

夫は店を出た後、駅の方へ向かい始めました。
これはイカンと思い急いで声をかけます。

「ちょっと、いいですか。○○さん。」
「え・・?なんですかあなたは・・。」

当たり前ですが不審に思われたようで逃げられそうになりましたが、耳元で「浮気調査のものです。お話が・・」というと
「そうですか。すこし話せますか?」と言われました。話の分かる男だ。

密室がいい、とのことなので二人でカラオケ店に入り話すことに。

カラオケ店に入るや否や彼は

「小遣いというか、貯めていたへそくりが20万あります。これでどうか・・。」
と言われました。こいつ・・・。

僕は
僕「ちょっと待って。そんなつもりじゃ・・。」
夫「え?」
僕「僕は、夫さんの味方ですよ。」
夫「え?」

男の友情というのは女が思っている以上に固い。

とある夫が帰ってこない妻を不審がり、妻の友人に電話をするとする。
「ウチの妻、どこにいるか知らない?」
10人に聞き、10人が知らない。と言った。
とある妻が帰ってこない夫を不審がり、夫の友人に電話をするとする。
「ウチの夫、どこにいるか知らない?」
すると10人に聞き、4人が知らないと答え、6人が今ウチで飲んでるよと答えた。

そういう生き物だ。

夫「なるほど・・。そういうことですか。」
僕「ええ。奥さん、知ってます。」
夫「悪いことをしてしまったな。」
僕「ダメっすよ、やるならバレないようにしなきゃ。」
夫「いや、もうやめるよ。これ以上つらい思いさせたくない。」
僕「おお、かっこいい!いい男ですね、夫さん!」
夫「ええ、妻のことは愛してますからね。」
僕「じゃあ、浮気相手とは別れるってことっすね。」

夫「相手??お店以外では会ってないですよ?」
僕「へ??」

夫「ああ、これまた懐かしい写真を・・。」

僕はノートパソコンをだし、夫に例の写真を見せた。

僕「懐かしい?」
夫「これ、昔の彼女ですよ。どこでこんな写真見つけたんですか?消したつもりだったのに。」
僕「昔の??SDカードに入ってたらしいですよ。」
夫「おかしいな、僕そんな昔の女の写真とっとくほど女々しくないですよ。別れた時にとっくに全部消しましたよ。復元したんですか?」
僕「いんや、まったく。」

二人で悩みながら見ているとあることに気が付いた。

僕「ちょっと解像度が違う・・。」
夫「解像度?」
僕「要は画質です。ほら昔の方が少し画質が荒いでしょ?」
夫「あ!」
僕「どうしました?」
夫「これ古いデジカメで撮ったやつだ。」
僕「古いデジカメ??」

調べてみると、昔の女と今の嫁さんと画像の拡張子が違っていた。
拡張子というのはデータを保存する際に使われる形式のようなもので、
カメラによって保存や再生できる拡張子は異なることもあるのだ。
つまり、古いカメラで撮った写真は新しいカメラでは見れない。
全て消したつもりだったが、見れてないだけでSDカードの中に残っていた。

しかし、パソコンで見るとすべての拡張子のデータが見れてしまう。
それで発見されたというわけだ。

夫「なるほど・・。いや、僕は機械の類はまるでダメで・・。」
僕「つまり、これは昔の写真で浮気なんかしてないと。」
夫「もちろんですよ。妻一筋ですって。」
僕「なーんだ!」
夫「ハッハッハ!これはお恥ずかしい。」
僕「ハッハッハ!」

夫「どうですか、探偵さん。いっぱい奢らせてくださいよ。」
僕「そうですか。ではお言葉に甘えようかな。」

僕「僕から奥さんには”これは昔の写真だった”って説明しておきますね。浮気もしていない、と。」
夫「恩に着ます。いやー、まさか見られるとはね・・。」
僕「こんなん見たらへこみますよ。ちゃんとフォローしといてくださいね。」
夫「ええ、もちろん。」
僕「20万あるんでしょ。旅行でもプレゼントでもいいじゃないですか。」
夫「そうですね。考えておきます。」
僕「いやー、よかったよかった。」
夫「どこ行きましょうか。あ、よく行くキャバクラあるんですけどどうです?」
僕「マジっすか、いいんですか。」
夫「ええ、もちろん。」

今となっては笑い話。
すっきり解決した男二人の間には固い友情が結ばれたのでした。

僕が独自に調査したアンケート「20代の会社員の男性1人に聞いた、今でも奥さんを愛してますか?」というアンケートによると、100%がYESと答えました。

僕と社長と黒魔術 後編

僕と社長と黒魔術 前編

見た目は”ヤ”だが心やさしい社長。
ドーナツ屋でほっこりなやり取りを見た後、僕は社長がある人と会うと言うので何故か付き合うことになった。

社長「その青白い顔、伸びきった前髪、傷んだパサパサした黒髪・・・。最適だな。」
ジュン「えっ」

何が何だか分からないまま、僕はイスに座って待っていた。

するとそこにやってきたのは・・・

継母「あー、喉乾いちゃったわよ!私は忙しいのに、ナントカカントカ。」

例の母親だ。

社長「はいはい、なんか飲みものでも買ってきな。」
継母は社長から1千円札をひったくるとレジの方へ向かっていった。

社長「仕事もしてねぇくせに、何が忙しいだよ。」

イラついた顔をしている社長を見ながら僕は超不安な心情だった。

飲み物を買ってきた継母はお釣りも渡さずにイスに座った。

継母「で、話ってなんなの?」
社長「ああ、実はな。この間の件なんだけどな。」

この間?
一体何があったんだろう。

社長「ほら。俺がオヤジに置いてった金が盗まれた件だよ。」
継母「あー、はいはい。忘れてたわ。」
社長「やっぱり物騒だろ。空き巣に入られたってのはよ。」
継母「そうねー。でも警察なんか言っても無駄よ!何もしてくれないから。行くだけ無駄!」

なるほど・・・。
一瞬で僕は理解した。

社長「分かってるよ。でもよ、俺も腹立って仕方ねぇからこの人に頼んだんだよ。」

えっ?

社長「この方は、実はな。プロの魔術師だ。」

えっ?

社長「あまりでかい声では言えないが、犯人をな・・殺してくれって頼んだんだよ。」

えっ?

社長「ほら、前に金を渡してんの見たろ。あれは、その契約金だ。」

えっ?

社長「だから、もう安心して平気だぞ。もうじき犯人は死ぬ。」

えっ?

継母「バカバカしい。そう言うの信じないのよ。」

社長「なーに言ってんだよ。アレ好きだろ。細木和子。あの人とこの方は知り合いというか、魔術師仲間らしいよ。なっ!」
ジュン「えっ!あ、ああ。彼女の腕は私にも勝るとも劣らんよ・・・?」
継母「え・・・?」
社長「ほら、えーっと。細木和子は占いだろ?この人は呪いとか魔術とかそういうのが専門だ。」

現代日本。
宗教にはなじみの薄い日本人だが、数多くのお寺や神社が存在する。
それと同じように公には出ないが「魔術」も存在する。
戦時中、それこそ記録には残っていないが敵の軍に謎の疫病が流行した。
体中の穴と言う穴から血が噴き出し、悶絶し、あまりの苦しみに殺してくれと懇願した。
敵軍は日本の化学兵器の使用を疑った。しかし死体を調べても特に病原菌や毒物は見つからない。結局その不審死は大量の死体と共に闇に葬られた。

どんな軍の偉い人でも、総理大臣でさえ「先生」と頭を下げる人物がいた。
その男は108の悪魔を自らの身体に憑依させ、敵を攻撃出来た。
やがて戦争は終わり、彼の力、悪魔の力も必要無くなった時代。
大魔術師も老いには勝てなかったのだ。彼は病床に伏した。
魔術が絶えることを悩んだ彼は死を迎える直前の彼は孫に全てを託した。
未来を占う魔術。恋を叶える魔術。自分を守る魔術。人を殺す魔術。
そうその孫というのが

社長「この方だ。」

ジュン「・・・・・・・。」

継母「そんなこと・・・。」
社長「あるんだよ。」

社長「俺が店を出す際、この方に占ってもらった。全部繁盛した。肝臓痛めた時も直してもらった。そして、俺にみかじめせびるヤクザがいたんだ。死んだよ。この間・・・。」

心なしか青ざめている継母。信じてるのか・・?

社長「な、だから今回は”金を取った奴がいる。こいつを100万で殺してくれ”って頼んだんだ。」

社長「な、なっ。もうすぐ死ぬよな。」
ジュン「あ、ああ。高額の報酬だったからな。こ、高級な悪魔を使った。私の持っている魔導書の中でも最も危険なものだ。さすがにかなりの代償を支払う事になったが・・・。」

僕はぐいっと袖をあげ、左腕を見せた。

ジュン「しばらくは使い物にならんよ。」

魔術師の腕は大きく赤く腫れていた。冬場、エアコンの効いた所にいると出てくる温熱性のじんましんである。

継母「うそ・・・。呪われた人はどうなるの・・・?」

ジュン「頭蓋骨は潰れ脳が噴き出し、内臓が口から吐き出される。」

こ ん な ふ う に・・・

魔術師は手元にあったエンゼルクリームを手で潰した。
押しつぶされ中からクリームが出てきた。

社長「お、おう・・・。」

3人とも額に冷や汗を浮かべ、潰れたドーナツを眺めていた。

後日。

社長「悪かったな。変な事に付き合って貰って。」
ジュン「何だったんですか、アレ」
社長「俺の金が無くなってな。ま、どうせあいつが盗んだんだけどよ。」
ジュン「だからって魔術師はないですよ。」
社長「俺もどうかと思ったけどよ、意外と聞いててよ。毎日神社や教会やら言ってるよ。」
ジュン「マジですか。」
社長「つくづくバカだよな。ま、ありがとよ!今日は奢ってやるぜ。焼肉でも行くか!」
ジュン「いいんですか?!行きましょう!」

ジュン「社長、つくづく人が良いですよね。」
社長「は?なんで?」

2人で焼肉を食べながら僕はそう社長に言った。

ジュン「だって、警察に突き出すわけでもなく危害を加える訳でもなく、呪いで復讐するんですもん。」
社長「仕方ねぇだろ。一応は家族になっちまうんだから。ホラ焼けてるぞ。」
ジュン「あー、それオレが焼いてたレバーですよ!」
社長「うるせぇな。早いモン勝ちだ。」
ジュン「呪い殺してやりますからね。」
社長「上等!」

数年後。
古本屋で魔術に関する本を見つけてふと思い出しこの記事を書いた大魔術師様でした。
2冊買ったので今度は本当に目指そうと思います。

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