天然酵母パンとヤギのウンコ
一.人の物は盗むな
これは僕が心に決めていることである。
いや、常識っつーか普通なんだけども、どんな些細な物でも決して盗んではならない。
僕はそう決めている。
んで。
話は変わって、ウチには毎週パンが届く。無料で。
というのも僕がとある移動販売のパン屋さんの弱みを握ったので、売れ残りで良いから持ってこいと言ってあるのだ。
弱みを握ったってのはウソなんだけど、実際はパンクして立ち往生してるのを助けてあげたお礼に、売れ残ったパンを持ってきてくれるようになったのだ。
週に一回、ウチの近所に移動販売しに来るんだけど、そのたび売れ残りをたくさん持ってきてくれるんだけど、日中家を開けていることが多い僕は大体家にいない。
そんな時は玄関先に袋に入れて置いて行ってくれるんだ。
そしてとある日。
その日はたまたま家にいた僕を訪ね、いつものようにパン屋さんが来た。
するとそのパン屋さん。
「先週の新作のパン、どうでした?」
と、聞いてきた。
いや、先週は無かった。
僕も「全部売れたんだろ。」位にしか思っていなかったけど、おかしいなと思ったんだ。
「あれ、先週無かったよ?」
そう聞くとパン屋さんは
「えー?確かに置いて行ったよ。」というじゃないですか。
その時はおかしいなー位にしか思っていなかった。
落ちたり風で飛ばされたりしちゃったんだろ、と僕とパン屋さんは納得した。
それからというものの。
玄関のドアにパンが掛けてあることが無くなった。
しかし、僕がいるときにはパン屋さんは訪ねてくる。
これは盗まれてるな。
なんとなくピンと来た僕は近所の地元住民の過去の離婚歴さえ知っているオバサンに聞いてみた。
すると
「きっと角の奥さんよ。あの人変なのよー。」と教えてもらった。
今までに近所の住民は庭の鉢植えや子供用のおもちゃなどを盗まれた事がある人もいるらしい。
そのオバサンも「ソファを買うから軽トラ貸せ。運転手に旦那(オバサンの)付きで。」と言われあんぐりした経験があるそうな。
多分、犯人はこいつだろう。
しかし、証拠はない。
オバサンは「カメラ付けたらどう?」みたいな事を言っていたが、金を掛けるのはバカバカしい。
どうしたものかと思っていたらちょうどパン屋さんが来た。
「今日は天然酵母のチョコチップパンだよー!」
僕はチョコチップパンを見てちょっと思いついた。
泥棒奥さん「どういうことなのよ!警察呼ぶからな!」
僕「なんで?」
泥棒奥さん「当たり前でしょ!どういう神経してるのよ!」
僕「なにが?」
数日後、僕の家に泥棒奥さんが怒鳴りこんできた。ものすごく怒っています。
と、言うのも。
ある日、わざとチョコチップパンを玄関に掛けたまま忘れた僕は、次の日その袋が無くなっていることに気付いた。
すかさず僕はドアの前に
「先日ここのチョコチップパンを盗んだ方へ。間違えてチョコチップでなくヤギのウンコを混ぜてしまいました。食べないでください。そのヤギは病気です。」
と貼り紙をした。
するとどうだろう。
憤慨した奥さんが来たじゃないですか。
どうやらもう食べたらしい。
泥棒奥さん「どうしてくれるのよ!慰謝料よこせ!犯罪だぞ!」
僕「自分の家の玄関にヤギのウンコ入りのパンをぶら下げちゃいけないっていう法律あるの?」
泥棒奥さん「話にならない。警察呼ぶ!」
僕「いいよ。」
と、お巡りさんが到着しました。
警察「で?どういうこと?」
泥棒奥さん「この人がパンにヤギのウンコ混ぜた!」
警察「混ぜたの?」
僕「チョコチップと間違えた。」
警察「で、あげたの?」
僕「いや。玄関にぶら下げただけ。気付いた頃には無くなってた。」
泥棒奥さん「早く捕まえて、こんなキチガイ!」
僕「自分の私有地の玄関にヤギのウンコ入りのパン置いたら犯罪なの?」
警察「うーん。」
僕「てか、盗んだんでしょ?パン。」
泥棒奥さん「あんな所にあったら誰でも盗むでしょ!置いとく方が悪い!」
警察「盗んだ?」
泥棒奥さん「だってあんなとこに置いてあるのよ!」
警察「ちょっと詳しく話聞こうか。警察署で。」
泥棒奥さん「ええ!良いわよ!早くあいつを捕まえて!」
泥棒奥さんは連れられて行った。
警察「と、こちらさんは被害者なのね。」
僕「そのようです。」
警察「でもね、悪いけど一応そういう行為は傷害罪になっちゃうんだ。」
僕「入ってないよ。」
警察「え?」
僕「普通のチョコチップパン。」
警察「ヤギのウンコじゃないの?」
僕「当たり前だ。」
警察「なるほど。」
僕「普通のチョコチップパンを盗まれたの。今までにも何回か取られてる。」
警察「貼り紙は嘘だ、と。」
僕「うん。」
そうだとも。
アレはただのチョコチップパン。むろんヤギのウンコなど入っていない。
僕「ちなみに玄関に”ヤギのウンコ入りのパン”って書いた紙を貼るのは違法?」
警察「もちろん問題ないね。」
僕「この勝負、僕の勝ちだね。」
警察「勝ちか負けかって聞かれたら”セーフ”ってとこだからね。」
後日聞いた話だと、警察の方から厳重に注意を受けたらしい。
僕の家に来た警察官から後日談を聞いていると
僕「そういやただのチョコチップパンだったってばらしたの?」
警察「いや、ヤギのウンコって事にしといた方が、良いお灸になるだろうと思って言ってない。」
僕「そうかもね。」
警察「とにかく、今度から素早く警察を呼んでね。そう言うことがあったら」
僕「はーい。」
僕も軽く怒られていると
パン屋さん「どうもー!来たよー!あら、警察の方?」
いつものパン屋さんだ。
僕「この人のパン。」
警察「なるほど。」
パン屋さん「どうしたの?まあ、いいや。良かったらお巡りさんもどうぞ!」
警察「あ、ありがとうございます。いただきま・・・チョコチップパンか・・・。」
僕「うわぁ。」
パン屋さん「え?なんで?」
ちょっと嫌そうな顔をする警察官と不思議そうなパン屋さんの2人が妙に面白かった。
一.人の物は盗むな
一.パンにヤギのウンコは混ぜてはいけない
僕の心得が一つ増えた出来事だった。
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玄関に物ぶら下げとくとか不用心だな。
袋の中にトラップを仕掛けておくのも良いね。
オモチャの虫とか。
賞味期限表示が一週間前とか。
ところで、そのパン屋さんは…
男なのかな?女なのかな?げへへ。
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前にもこんな話しなかったっけ!?
ひっかけて警察に連れていかれるみたいな♪
変なおばさんを退治するジュン君カッコいい!!
ジュン君はこんなときはどうしますか?
○隣の部屋の人のギターの音が夜中にうるさくて眠れない時。
○職場の隣の人のひとり言がうるさくて困った時。
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人の物は盗むな
家の家訓にした覚えある!!